このことは、これらのワクチンが、ポリオのように、注射されるよりは経口摂取されたほうがよいことを意味する。
このほうが明らかに子供たちにとってより好ましいだけでなく注射よりも安全であるから、経口ワクチンに関する研究は目下成長分野のひとつである。
植物はウイルスたんぱく質を発現するように遺伝子工学的につくり変えられており、すでに私たちはB型肝炎ウイルスの表面たんぱく質を発現するバナナや、ロタウイルスのたんぱく質を発現するジャガイモなどのトランスジェニックな「遺伝子を導入された」植物を手にしている。
ゆえに、食べられるワクチンという考えが急速に現実のものとなっているのである。
しかしこれは予想される以上に難しいことがわかり、今日の科学者たちにとって、最大の挑戦のひとつとなっている。
一九九七年に、アメリカ合衆国のK大統領は一0年以内にエイズワクチンを開発することを約束し、この努力の先頭に立たせるために新たにワクチン研究センターを設立した。
しかしながら、どのように研究を進めるのが最もよいかについて科学者たちの意見は分かれている。
ある研究者グループは、実際的な試行錯誤の研究方法をとるのがよいと考えている。
彼らの主張によれば、HIV感染が致死的であり、それに感染した人々が毎日死亡しているのであるから、成功のチャンスのあるものならばどのような戦略でも臨床試行で試験すべきであるという。
他の研究者グループは、HIVに対する防御的免疫や、どのウイルス遺伝子を標的にすべきかについてより多くのことが判明するまでは、臨床試行に取りかかることにほとんど意味がないと考えている。
彼らの主張によれば、確固たる科学的証拠によって支持されていない臨床試行はおそらく失敗するになり、危険でさえあるかもしれず、さらに、限られた研究資金を浪費して人々の信頼を損なうことになるという。
アカゲザルに自然感染するサル免疫不全ウイルス(SIV)は、その自然宿主においては無害であるが、近縁のマカクサルに感染するとサル後天性免疫不全症候群(SAIDS)を引き起こす。
これはヒトのエイズ(AIDS)にきわめて似ているので、ワクチン戦略を実地に試みるために私たちがもっている最良の動物モデルである。
この伝統的な取り組み方がマカクサルでうまくいっていることは確かである。
高いウイルス増殖率の維持を役目とする遺伝子を除去することによって弱毒化したSIVは、十分に毒性の強いウイルスの攻撃からサルを完全に防御することが試験で示されたこれまでに唯一のもの学者たちは、ワクチンを接種されたマカクサルにおいて、防御的免疫の標的となるウイルスたんぱく質を突き止めるのに忙しい。
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